"浅野いにおについて、僕はある一定の世代からの賞賛と、それ以上の世代からの否定的な評価の両方を感じている。もちろん個人的な印象によるものであり、だからむやみに断定できないが、否定的な評価をくだしているよう..."

浅野いにおについて、僕はある一定の世代からの賞賛と、それ以上の世代からの否定的な評価の両方を感じている。もちろん個人的な印象によるものであり、だからむやみに断定できないが、否定的な評価をくだしているように見えるのは現在30代である僕と同じくらいか、それ以上の世代の人々のように思う。

個人的な印象に基づくとは言え、それはなぜなのかということをよく考える。浅野いにおは、繊細な若者が息の詰まる現実を生きる青春を繰り返し描いており、その読み味はかつて僕の世代が読んだような漫画、たとえば岡崎京子や安達哲などにすこし似ている。似ているがしかし、全く異なっている。浅野いにおの登場人物たちは利己的で、醜悪に振る舞い、ほとんど作者は青春や恋愛の主題に隠しながら、なお人の悪質さを見せつけるかのようである。そこが、僕の世代がかつて読んだ、悲しみに満ちながら自己承認的な優しさと甘さを与えてくれる物語と決定的に異なっている。似ているのに全く違う。そのことが拒否反応を催すのではないか。